bestcar第4回「耐久の富士(歴史)」

【「耐久の富士」っていったいナゼ?】

 「耐久の富士」というキャッチフレーズをお聞きになった人も多いはず。富士スピードウェイは全国にある国際サーキットのなかでも首都圏に近く、その存在感の大きさはすでに皆さんご存じのとおり。

 しかし「耐久の富士」というフレーズを聞いたときになんとなく「そうだっけ?」と思った人もいたのでは。現在でもスーパーGTやスーパーフォーミュラなど多くのレースカテゴリーが開催される富士スピードウェイだが、忘れてはいけないのが耐久レースの多さである。

 まずは、スーパー耐久。すでに昨年の大会は10時間にまで競技時間が延長されたが、ついに今年「富士スーパーテック24時間レース」が開催されるのは既報のとおり。また、人気のSUPER GTも複数ドライバーによる耐久レースである。富士で開催される第2戦は500kmレース、第5戦は昨年までの300kmレースから、500mileレース(約804km)に延長され、耐久色がさらに増している。そして、WEC(世界耐久選手権)も6時間耐久レースとして開催されており、耐久レースでは世界選手権の舞台にもなっているのが富士スピードウェイなのだ。

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 さらには、アジアン ル・マン シリーズの他、アマチュアドライバーでも参加できる6時間耐久レースなど多くの耐久レースを開催している。こうやってふり返ってみるとつい最近「耐久の富士」というキャッチフレーズがついたような印象を受けるかもしれないが、実はその歴史はとっても深いものなのだ。

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【富士には”ハコ車”耐久のDNAが根付いている】

 実は原稿を書いている編集担当はれっきとしたレースファンではある。富士スピードウェイで24時間レースが本当にできると聞いて興奮が収まらないまま原稿を書いているワケだが、その理由としては、レース用スポーツカーや乗用車ベースの「ハコ車」の耐久レースが富士で行われてきた歴史がある。

 時は東京五輪が開催され、東海道新幹線が開通した3年後の1967年。日本で初めての24時間レースが開催される舞台がそう、富士スピードウェイだった。記念すべき第1回は1967年4月の開催で最初の「ハコ車」の頂点には、細谷四方洋/大坪善男組のトヨタ 2000GTが就いている。しかし24時間レースは翌年の大会で一度途絶えることになった。

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 「あれから50年」である。ついに富士に24時間レースが帰って来る!!その歴史がふたたび鼓動を打ち始めるのである。

 過去の歴史を紐解けば「ハコ車」レースの中でも近年人気の高かったのは、グループA(FIA グループA規定車両)と呼ばれるカテゴリーの耐久レースだった。1980年代の中盤から始まった、全日本ツーリングカー選手権では、市販車をベースとしたツーリングカーでの耐久レースが多くのファンを惹きつけた。特に1989年の日産スカラインGT-R登場で人気は絶頂を迎え、街で見かける身近なマシン達を極限まで改造したレーシングマシンによる激しいバトルは多くの観衆の心をガッチリ掴んだ。また、レース専用スポーツカーでCカー(FIA グループC規定車両)と呼ばれたモンスターマシンによる耐久シリーズも多くのファンを集め開催されていた。これらのレースは世界的にも、F1などのフォーミュラカーと一線を画す「ハコ車」の最高峰だった。

 スポーツカーを中心に行われる世界耐久シリーズ(WEC)は「ル・マン24時間レース」が有名だが、1990年代頃は日本メーカーの参戦もあり大いに盛り上がりをみせていた。ル・マンは、世界3大レースのひとつとして、いまだにその頂点に君臨している。1982年の日本初開催となった富士WECでは海外から来たメーカーワークスチームのポルシェやランチャの速さに関係者やファンは衝撃を受けることになったんだ。トヨタや日産、マツダなどの日本メーカーも毎年、新型マシンを走らせて、すごく盛り上がっていたのが懐かしい。このスポーツカー耐久シリーズは、富士スピードウェイでも富士ロングディスタンスシリーズとして年間4回開催され1992年まで続く人気レースだった。

 そして、今年開催される「富士スーパーテック24時間レース」のDNAの原点はスーパー耐久シリーズの前身にあたる「N1耐久レース」だ!!市販の車両を使用し、FIAグループN規定に基づいた非常に改造範囲の少ないレース車両で1990年初開催当時から6時間耐久レースとして開催してきた。そして時代と共に改造範囲を変更しながらスーパー耐久シリーズとして成長し、参加できる車もヴィッツやフィットのようなコンパクトカーからFIA GT3車両まで一緒にレースに参加可能な、世界でも珍しい現在の姿に変貌を遂げた。

 これら様々なレースでの耐久のDNAは、富士スピードウェイの歴史の中に刻まれていて、現代にもずっと繋がっているのが、お分かりいただけただろうか。

【耐久の富士から24時間の富士へ!】

 そして、今回紹介してきた耐久のDNAを受け継いで開催されるのが「富士スーパーテック24時間レース」なのだ。耐久レースのエキスをギュッと濃縮してきた富士スピードウェイが究極の耐久レースである24時間レースを復活させる。この時代に24時間のレースを行うことがとても大変なことは容易に想像できるが、このレースが何年も続くことが出来るのであれば、将来は「耐久の富士」から「24時間の富士」になるかもしれない!世界からも注目されそうなこのレースに、あなたもちょっと胸が躍る気がしないだろうか? ワクワクが止まらない(笑)。